別に、前へ進むのだけがいいともいえないし、悪いともいえない。そこにずっといることは大変な苦労を要することだし、変わっていくのは生徒の顔だけ、だなんて、そんなさみしいことをいわないで、と思ったけれど口には出せなかった。先生だって人間だし、女のひとだし、不動なわけがないのに、どうして今しか気付けなかったんだろう。涙が出そうになって、それを堪えて歩き続けた。
学校から駅までの間に3人の卒業生と会って、近況を聞いたりしている姿からは、さっきの一言が嘘みたいだった。そんな嘘、なんて素敵なんだろう。なんだか、男前の先生がますます好きになってしまった。